うつわリポート

深山の開発担当者による、うつわ深堀り解説。普段は何気なく手に取るうつわにも、実はたくさんの技術やこだわりが詰め込まれています。もっとうつわのことが好きになったり、知りたくなったりするきっかけになればうれしいです。

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

01:cheese(チーズ)を作ろうと思ったきっかけ

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024
深山では展示会や見本市に出展するタイミングにあわせて、年に数回、新製品を開発&発表しております。
これまで、もともと深山にあった形状に新しく開発した釉薬を施してリニューアル製品(または復刻版)として発表をしてきた私ですが、昨年の秋頃に「そろそろ、イチからうつわを開発してみるか」と任せて頂ける事になりました。つまり、色だけではなく形状も新規開発という事になります。これは責任重大です。

早速、ふとした時に思いついたアイディアを書き溜めていたノートを開き、「どんなお皿がいいかなあ、お皿じゃなくてマグカップとかもいいなあ」と色々考えていたのですが…。改めてアイディアノートを見返してみると、なんかやたら食べ物モチーフのお皿が多い事に気づいたのでした。
食器には料理やスイーツ、つまり食べ物をのせるので、なんとなく食べ物に関連性があるものが頭に浮かんでいたのかも知れません。だったら、いっそ「これでもか!」と食べ物に寄せたうつわを作ってみたいと思い、迷いに迷った結果、チーズをモチーフとしたお皿を作る事に決めたのでした。

02:cheese(チーズ)と言えば、トムとジェリー?

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

※画像はイメージです

さて、チーズと言えばみなさんはどんな形や色を思い浮かべますか?
私の頭に真っ先に思い浮かんだのは、アニメに出てくるような黄色でふっくらとしていて、穴がぼこぼことあいている三角形のあのチーズでした。一番有名なのはやはりトムとジェリーでしょうか。

せっかくなので、どうせ作るならアニメに出てくるようなあの可愛いらしいチーズをそのままうつわにしようと思い、まずは明るいイエローマットの釉薬を選びました。
ちなみに、同じイエロー系の釉薬でも念のために透明感のある釉薬や窯変釉も一通り試したのですが、やっぱりアニメの中に出てくるチーズらしさを表現できるのはイエローマット釉だけでした。

03:カワイイだけではなく、深山の職人の技術が詰まっています

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

エメンタールチーズにある、穴をいろんな方法で再現。

アニメに出てくるあのチーズは、実際に存在します。チーズフォンデュには欠かせないエメンタールチーズというものです。チーズアイと呼ばれる多数の穴があるのが特徴です。
チーズのお皿を作るのであれば、やはりこの穴は表現しなくてはいけない。という訳で、3つの手法でこの穴を再現する事にしました。

一つ目は「欠け」です。
と言っても、本当に欠けている訳ではなく、欠けているように見せかけた丸みのある欠け。触っても痛くないように滑らかになるよう職人が仕上げをしております。

二つ目は「くぼみ」です。
全体的にバランスよく、ポコポコとくぼみをつけて穴を表現しました。大・中・小のサイズがあるのですが、バランスよく配置した上でくぼみの深さも均一になるように調節しました。

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

3枚を重ねるとピッタリおさまるようにサイズも計算しました!

三つ目は「穴」です。
そう、穴を表現するためになんと本当に穴をあけちゃいました!お皿としてちゃんと使えるようにはしたいので、リムの部分にしか穴は再現できないのですがデザイン性を保ちつつ、お皿として使う時に危なくないかも検証しつつ、何度も形状を修正するのはかなり大変だったけれどいい勉強になったな、と思います。

欠け、くぼみ、穴。
製造工程において、各ポジションの職人による技術がギュッと、この小さな穴に詰め込まれています。

04:銅板転写によるブルーチーズのカビの表現

黄色のチーズのうつわがアニメに出てくるようなチーズをイメージしているのであれば、こちらのブルーチーズのデザインは出来るだけ本物のチーズに近づくように柄も色も再現度を高めたものになります。

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

銅版転写のチップ(色見本)を窯変釉にて焼成したサンプル。白磁で焼成するとまた違う色で発色します。

チーズのうつわを作ろうと決めた時に、すぐにいつもお世話になっている銅版転写屋さんに伺って、ブルーチーズの柄をよりリアルに再現するためにはどうしたらよいのか、というアドバイスを沢山いただきました。
その結果、銅版転写でブルーチーズの柄を再現できそうと判明!
深山の加飾の技術である、銅板転写(下絵つけ)に窯変釉を組み合わせて、まるで本物の青カビのような模様になるように、何度も顔料を調節しています。とにかく試作を繰り返す日々です。これはイケそう!と思っても、窯から出てくると全く違う色になっている、なんて事もしばしば。焼いてみないとわからないのです。

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

人生のうち、一番ブルーチーズを食べて眺めて写真を撮った期間でした。

ブルーチーズの青カビの色を試作するかたわら、青カビの模様を銅版転写にすべくスケッチをしたり写真を撮ったりという作業も同時進行で進めていました。過去、何度かブルーチーズは食べた事がありますが、まさかこんなに食べ続ける日々が訪れるなんて。
他の銅版転写の柄とは違い、ぼんやりとかすれているような…グラデーションがかかっているような、そんな感じのデザインがいいなあと思い、本物のブルーチーズを参考にデザインも決定。

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

ですから、ブルーチーズのうつわはよーく見ると、それぞれ模様の色合いが若干異なるのです。全体的なバランスなどは統一させていますが、少しずつ色合いや模様が異なるうつわ。
でも、そこがまた敢えて自然に発生する青カビのようでそれっぽくていいな、と私は思っています。

05:豆皿のうしろには、チーズを狙っている「あのこ」が隠れてる?

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

ここで、ちょっとだけcheese(チーズ)開発時の裏話でも。
当初、豆皿はチーズの形をしているのではなく、私はネズミちゃんの形をした豆皿を作るつもりでした。チーズのうつわを重ねた時に、チーズを狙っているネズミちゃんが再現できたらいいなあ、と考えたからです。

ですが、やはり「食品をのせるうつわ」という事で上司にNGを出されてしまいまして…。
でも、どうしても諦めきれない!これはチーズ×ネズミちゃんで完成されるシリーズなのに、と色々考えた結果、こっそりとチーズを狙っているネズミちゃんという事で、豆皿の裏側にいるというのはどうだろう?と、ふと閃いたのでした(天才)。チーズの形をしている豆皿を設計しつつ、こっそりとハマの部分にネズミのモチーフを入れて会議に通しました。当然会議でバレましたが(笑)、「まあ、裏ならいいか」となんとか上司のOKも頂きやっと製品化することが出来たのです。
時間はとってもかかりましたが、私のこだわりが詰まりに詰まったcheese(チーズ)のうつわを完成させる事ができて、とっても満足しております。

06:こんな風にcheese(チーズ)を使ってください

cheese(チーズ)26cmプレート

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

cheese(チーズ)シリーズの中で一番大きなサイズのお皿です。直径は約26cmですが、リム幅をのぞいた料理を盛り付けられる面としては20cm前後となります。ですが、フラットな盛り付け面となっていますので見た目よりもたっぷりと料理を盛り付ける事が可能です。
パスタやサラダなど、また、パンケーキなどのスイーツ類にもお使い頂けます。

cheese(チーズ)18cmプレート

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

おやつタイムにケーキをのせて食べたいなあ、と思って作ったサイズ感のお皿です。一般的にはパンプレート、ケーキプレートと言われるサイズですね。cheese(チーズ)シリーズをおやつタイムに使うのであれば、こちらの18cmプレートと豆皿があればとりあえずOKだと思います。

cheese(チーズ)豆皿

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024

cheese(チーズ)シリーズの中で一番お気に入りのアイテムです。豆皿と表記していますが、カトラリーレストとしてもお使い頂ける高さに調節しました。お料理にかけるスパイスなど、おやつに添えるホイップクリームなど、プレートと組み合わせてお使いください。

07:ユーモアあふれる、cheese(チーズ)をよろしくお願いします

うつわリポート「cheese(チーズ)のうつわが生まれるまで」2024
私が初めて手掛けた、cheese(チーズ)のうつわ。その、うつわが出来るまでの裏側をやっと皆さんにお伝えすることが出来ました。お披露目したのは2023年の秋頃になるのですが、2023年の頭頃にはすでに取り掛かっており、半年以上もの時間をかけてなんとか出来上がったうつわです。

おかげさまで、展示会で賞を頂いたりイベント会場で「カワイイ!」と声をかけて頂いてます。
今までの深山にはなかった、ちょっとユーモアあふれるcheese(チーズ)のうつわを是非よろしくお願いします。

cheese(チーズ)シリーズはこちら


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岐阜県瑞浪市。三市からなる美濃焼産地の中でも磁器、特に白磁の製造に特化したこの地区に深山はあります。
昭和中後期、世界の工場として欧米の洋食器ブランドの依頼に対し上質な白磁の洋食器を供給した時代に培われたものづくりの基礎。
私たちは、それら受け継いだものを基に、現代の暮らしに寄り添った丁寧な道具としての器を作っています。
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Mizunami City, Gifu Prefecture.
Miyama is located in the Minoyaki producing area consists of three cities where porcelain, especially white porcelain is produced.
Foundation of manufacturing that was fostered during the middle and late period of Showa era when western style white porcelain tableware was provided, having received orders from the European and American tableware brand companies.
We are producing tableware as a gracious tool suitable for contemporary life associated with what we have inherited.
Please feel free to make inquiries to us about producti

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