経験者に学ぶ(2025年1月17日)
深山ではほぼ1年中、毎日なにかしら窯を焚いておりますが、やきものはいきもの。同じ形状、同じ釉薬のものを焼成しても全く同じ仕上がりにはならないのが面白いところでもあり、もどかしいところでもあります。
大きなお皿には画像のような「中ハマ」があります。お皿をきちんと安定させて使うために必要なハマですが、仕上げをきちんと行わないと大変な事になるのです。いつもは普通に施釉していてもなんら問題ないのですが、冬になり寒くなってきたから?それとも、久しぶりに使う釉薬だったから?
中ハマの内側にぷつぷつがいっぱいできてしまいました。
これをこのまま焼成すると、ピンホールとなってしまい不良品ができてしまいます。なので、施釉後に仕上げとして同じ釉薬を筆に取り、この小さな気泡を埋めていくように塗りなおしを行います。ただ塗ればいいというわけではなく、この気泡をしっかり埋めないと逆に気泡に蓋をしただけという状態になり結局ピンホールになってしまうのですね。これはもう、何度もやって経験を積んでいかないと習得できない技だと思います。
(ちなみに私が練習でやらせてもらったら見事にピンホールになってしまいました)
ただ、こういう気泡も焼成前に直せばOKという釉薬と直さなくても焼成の段階で溶けて消える釉薬もあるので修正しなくていい、という釉薬もあるのです。いわゆる、溶けやすい釉薬というものなんですが、これもまた釉薬の特性をちゃんと頭に入れておかないとダメなので、長く働いて経験を積んでいる先輩方に教わっていくしかありません。
現在、深山で取り扱いのある釉薬は数百種類にもおよびます。なかには、一年のうちに数回しか使わないという特殊な釉薬もあるので、覚えるだけでもめちゃめちゃ大変なのです。でも、一度でも荷口で流れると現場の職人たちはちゃんと頭の中に記憶してくれています。すごい。
私は毎日現場にいるわけではありませんが、サンプル作成など時間があるときはできるだけ現場に入って自分で作業を行う事にしています。その時に、現場の人たちにいろいろと質問をして、少しずつその知見をわけて頂いている感じです。聞いて学ぶだけではなく、自分で手を動かすのって大事ですよね。
商品戦略室
渡辺
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