うつわリポート

深山の開発担当者による、うつわ深堀り解説。普段は何気なく手に取るうつわにも、実はたくさんの技術やこだわりが詰め込まれています。もっとうつわのことが好きになったり、知りたくなったりするきっかけになればうれしいです。

MIYAMA’S CUP & SAUCER(深山のカップ&ソーサー)

MIYAMA’S CUP & SAUCER(深山のカップ&ソーサー)

MIYAMA’S CUP & SAUCER(深山のカップ&ソーサー)

深山では主に「圧力鋳込」と「排泥鋳込」、この2種類の製造方法で日々うつわを製造しています。「排泥鋳込」でつくられるポットに関してはすでに別の記事でご紹介しているのですが、そのポットと一緒に使うことができるカップ&ソーサーについてこちらの記事でご紹介したいと思います。

↑深山のポットについてはこちらの記事をご覧ください

記念すべき最初のカップ&ソーサーは…J ホワイト角

深山で初めてつくられたカップ&ソーサーは、こちらのJ ホワイト角シリーズの製品です。その歴史が古すぎて、当時社内で撮影したカタログ用の画像がこちら。当時はまだプロのカメラマンに撮影を依頼することもなく、社内でスタッフが四苦八苦しながらカタログ用の画像もすべて撮影していたのですね。
開発当時、デミカップが流行していたこともあり、こちらのカップは少し小さ目サイズ。ですが、デミ用とうたっているわけではなく一般的なコーヒーカップとしても使える「ちょうどよい」サイズ感でした。
※現在は販売を終了しております

しかし、結局のところデミ用の需要も高まり、のちのちデミカップとソーサーを開発するという…。
ところで、J ホワイトのJってなんなの?って感じですが、これはJAPANの頭文字のJなんですって(先輩に聞きました)。日本が誇る美しい白色…とか、そういう事なのかな。

雑貨店でロングヒットを記録した紅茶用のカップ&ソーサー

J ホワイト 角のあとに、同じく四角い形のobi(オビ)のカップ&ソーサーを発表します。

変形のうつわが流行っていたからなのですが、立て続けに四角いカップ&ソーサーを開発したので、次はちょっと違う形にしようと誕生したのがこちらのrenge(レンゲ)のカップ&ソーサーです。どちらかと言えばコーヒーよりも紅茶に似合いそうな、背丈も低く口も広いタイプ。雑貨店さんに人気が強く、某雑貨店でロングヒット商品になるという記録を残しました。ちなみにデザインをしたのも女性デザイナーです。

鋳込みだからこそできる、自由なデザイン

上から見るとまるでしずく(ドロップ)のような形をしている、drop(ドロップ)のカップ&ソーサー。四角いカップ、丸いカップを作ったあとに鋳込みだからこそできる形状を、ということで、しずくのような形をしている変形のカップ&ソーサーを作ったのでした。上から見るとすごく可愛い形をしています。

ありそうでなかった、楕円系のカップ&ソーサーが登場

perito(ペリート)とはポルトガル語で「かわいい子犬」という意味。のびのびと弧を描くハンドルを見ると、嬉しそうに近づいてくる愛犬の尾っぽを思い出してしまいます。もともとは絵柄をつけやすいように、レリーフなどは入れずにシンプルな形状を目指したシリーズ。ソーサーも落とし部分がなく、カップがピッタリとフィットするような広さと深さを計算しています。ソーサーとしてだけではなく、お茶菓子をのせて使うこともできる便利なソーサーなのです。

まるで人の手でつくられたようなナチュラルな存在感

renge(レンゲ)に少し雰囲気が似てますね。空に浮かぶ雲のように、ふんわりと柔らかな形。だから、fuwari(ふわり)。ぴょこんとした「つの」がチャームポイント。
のんびりとしたティータイムを過ごしていただけるように開発されたカップ&ソーサーです。この頃、雑貨ブームが起きていて食器を取り扱う専門店だけではなく雑貨屋さんからもカップ&ソーサーやマグカップなどの需要が多かった時期でした。なので、雑貨屋さんにおいてもらっても違和感がないような、手作り感のあるナチュラルな形状を意識してこのfuwari(ふわり)を開発したんですよ。

ギフト用として大ヒットを記録!ハートを重ね合わせて使うカップ&ソーサー

残念ながらすでに廃盤になってしまった製品です。cocoro(ココロ)はギフト用に開発されたカップ&ソーサー。一般的にソーサーの落としの部分は丸い形が多いのですが、あえてハート型に。さらにそのハートが立体的に浮かび上がっていて、そのハートにカップのハマがぴったりとハマるというデザインでした。大ヒットした製品ではあるのですが、まったく同じデザインではないものの他社さんでもこのような変わったデザインの製品がだんだん増えてきてしまったため、深山のカタログからは落ちてしまった製品です。でも私は可愛いくて好きなんです。こういう遊びココロのある製品を開発したいな、と思ってます。

その後、コーヒーブームが到来。2009年に発表したコラムについてはこちらの記事をご覧ください。

レリーフありか、レリーフなしか。

もともとは業務用として木瓜形をモチーフにデザインしたforet(フォレ)。ソーサーは2種類あって、シンプルなものと画像のような葉っぱのレリーフが入っているものがあります。レストランなどではレリーフがないシンプルなものが好まれ、カフェなどではレリーフが入っているものが好まれます。業態によって合う・合わないがあるみたいです。


また、2024年には白磁だけではなく葉っぱのような力強いグリーンの釉薬をかけて、復刻版として新しいカップ&ソーサーが誕生しました。

どこでもなんにでも使える シンプル・イズ・ザ・ベスト

カフェブーム到来。第1弾としてbico(ビコ)を、第2弾としてknuq(ヌック)をリリースしましたが、どちらも元々あった形状を色替えしたり模様をつけたりした製品でした。
第3弾としてリリースしたのはこちらのplue(プルー)。イチから形状もおこし、スッキリとしたスタンダードなデザインに仕上げています。改めて、こういうシンプルな形状のカップ&ソーサーが今までなかったよね…と気づかされた製品となったのでした。

ほんわか、明るい気持ちにしてくれるミモザイエローのカップ&ソーサー

コロナ禍に突入し、おうちカフェを楽しんでもらおうと開発したのがracca(ラッカ)です。たっぷりと飲めるように深山では珍しく少し大きめサイズで設計したカップに、ソーサーは単体でも使えるよう落としの部分をなくしたデザインになっています。つまり、ソーサーとしてではなくお茶菓子などをのせるプレートとしても使えるんですね。
沈んでしまった気持ちが和らぐように、元気が出る優しいミモザイエローという釉薬を新たに開発し、racca(ラッカ)のオリジナル釉薬として展開しました。racca(ラッカ)はこの形状…というよりも、このミモザイエローのファンです!と言ってくださるお客様が多いように感じます。

ソーサーではなくプレートとして開発しました

2024年、深山の最新版のカップ&ソーサーはslope(スロープ)です。すでにポットはご紹介済ですが、このシリーズは定番品として使えるシンプルな形状がコンセプト。なので、レリーフなどは一切ありません。それでも、そのフォルムやうつわの厚みにはすごくこだわってデザインしました。一見シンプルに見えますが、計算に計算をしまくったシンプルさでもあります。
racca(ラッカ)同様にこちらのソーサーも落とし部分はありません。代わりにリムをつけて、お皿として使えるようなデザインに。オーバルなので、画像のようにカップをのせてもお茶菓子がおけるという嬉しい設計です。

MIYAMA’S CUP & SAUCER(深山のカップ&ソーサー)

実は、次にどんなカップ&ソーサーを開発すべきか…という話をすでに開発スタッフ同士で話し合っております。改めて深山のカップ&ソーサーを振り返ってみると、やはりその時々のトレンドであったり需要だったりを汲み取りつつも、深山らしさを忘れないデザインが多かったんだなあ、という思いです。当時は斬新だった四角いカップ&ソーサーも今となっては当たり前になってきつつあります。特徴的なデザインよりも、いつどんなシーンでも使えるシンプルな形状が求められてきつつもあります。
そんな中で、使いやすくスッキリとしたデザインでありながらも、ありきたりなデザインにはならない「深山らしい」カップ&ソーサー。もうすぐ、みなさんのお手元にお届けできると思いますので、楽しみに待っていてくださいね。

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岐阜県瑞浪市。三市からなる美濃焼産地の中でも磁器、特に白磁の製造に特化したこの地区に深山はあります。
昭和中後期、世界の工場として欧米の洋食器ブランドの依頼に対し上質な白磁の洋食器を供給した時代に培われたものづくりの基礎。
私たちは、それら受け継いだものを基に、現代の暮らしに寄り添った丁寧な道具としての器を作っています。
製造や製品、使い勝手に関するお問い合わせなどございましたらお気軽にお問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。

Mizunami City, Gifu Prefecture.
Miyama is located in the Minoyaki producing area consists of three cities where porcelain, especially white porcelain is produced.
Foundation of manufacturing that was fostered during the middle and late period of Showa era when western style white porcelain tableware was provided, having received orders from the European and American tableware brand companies.
We are producing tableware as a gracious tool suitable for contemporary life associated with what we have inherited.
Please feel free to make inquiries to us about production, products and usability.

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